2024/04/11
『裸のサル』は化粧好き を読みました。
イギリスの動物行動学のデスモンドモリスとビューティーサイエンス研究所にて化粧文化の研究をする石田かおりさんの対談本です。
お二人の話の中で人間において化粧をするという行為は非常に厳格な宗教的な背景や戦争などで飢餓的状況にあることを除いてすべての民族において「化粧」はなくてはならないものだと言います。
化粧は今でこそ鏡があるので自分でするものですが古来の日本では鏡は現在のような実用的なものでなく権力の象徴や神社のご神体としての意味合いが強かったようです。
ですからその時代は化粧は自らするものではなく相手にしてもらったり、するものでした。
動物行動学からの見地でいくとこの行為は類人猿のグルーミングに似ているそうです。
グルーミングは動物園のお猿さんがノミをとっているような行為です。
「ような」とつけたのは実際はノミを取ることだけが目的ではないようで互いにグルーミングをすることによって親密さを維持したり社会集団を維持していくという意味合いもあります。
これを『社会的グルーミング』と言います。
石田さんは
他の人と触れるということは、互いに化粧しあって社会的グルーミングで関係を強化することだけでなく、自分自身をも強く安定にすることにも有効ではないかと考えられる。
と言います。
石田さんはボランティアで施設で認知症のお年寄りに長年マッサージやお化粧をすることで素晴らしい変化を目の当たりにしたそうです。
例えばマッサージやお化粧をすることによって認知症の症状がよくなっていったり、自力で歩行が困難だった状態の方が歩けるようになったりということが数多くあったそうです。
さらに人にしてもらわなくとも普段お化粧をする習慣のある女性の場合、何らかの理由でノーメイクで歩いていたところ偶然知り合いに出くわしてしまったら気まずい思いをするかもしれません。
反対に身なりを整えお化粧をしていると積極性が増すということを実感できるのではないでしょうか。
お化粧は人と人との関係に大いに貢献します。
ある新聞の投書欄に息子さんを亡くしたショックから引きこもりになってしまいました。
ある日、娘さんから一本の綺麗なピンクの口紅をプレゼントしてもらいそれをきっかけに自分の姿に気づき明るく前向きに生きられるようになったという例もあります。
お化粧は自己回復と人間関係の形成のきっかけになった例も多くあるそうです。
コロナ渦で人への許容が狭量になりストレスフルな環境の中でマスクの着け外しが多くなり
「マスクにメイクや口紅が着くのでお化粧が面倒になった。」というお話も伺うこともあります。
これを機にたまにはお化粧して気分転換をしてみてはいかがでしょうか。
それではまた。