2024/04/11
この前の嵐の日の夜なぜか寝付けませんでした。
と来院された患者さんがおっしゃっていました。
この数日前に今年最大級の低気圧が日本列島を通過しました。
低気圧と睡眠(入眠)の関係はなんなのでしょうか。
大きな低気圧だったため精神的に不安定だったのかもしれませんがそれだけではありません。
低気圧で自律神経が乱れる
耳の奥(頭蓋骨の中)には内耳というところがあります。
機能は音を電気信号に変えて脳に伝えることや、回転運動や体のバランスを司るところでもあります。
この器官が気圧の影響を受けるとストレスとなり自律神経が乱れると言われています。
回転運動や体のバランスのも関わるので症状としてはめまいを感じることもありますし、自律神経が乱れることによりだるさや頭痛、関節痛、食欲減退など多岐にわたり影響を及ぼします。
もちろん春先では急な温度変化も起きるので体への負担がかかり余計に辛さを感じるかもしれません。
この天候の変化による体の不調を『気象病』といったり『お天気病』と言います。
一般的には高気圧の場合は交感神経優位になり活動性が高まることから個人的には低気圧の際には副交感神経の方に作用しやすくなり体のだるさを訴える方が多いのではないかと思います。
体の痛みが強い場合は交感神経優位との見解もありますが今のところ確定的な研究結果は出ていないというのが現状ではないかと思われます。(2019年現在)
交感神経優位の場合は筋肉の血流量が増えたり、汗腺が働き汗をかきやすくなったり血圧があがり脳も活動的になるため日中の活動に適した状態といえます。
一方で副交感神経が優位になると内臓の機能が高まり、心拍数は減少し、脳はリラックスするためどちらかというと休息モードになります。
日中動かなければならないのにリラックスモードではかえってだるく感じるのです。
副交感神経優位なのに寝られない?
ではリラックスする方の神経が優位にも関わらずなぜ寝られないのでしょうか。
もしくは交感神経優位だから眠れないという可能性もありますがそれだけではありません。
低気圧の際にはヒスタミンの分泌が促進されるという説があります。
実際気圧がかかっていると同じ圧力で内側からも押し返しているのです。
低気圧になると外からの圧力が低下します。血管も同じように内圧が低下して循環が悪くなり血液中の水分が外に移動してむくみの状態になります。
そうすると痛みの物質であるプロスタグランジンやヒスタミンなどの物質が生成されます。
痛みの物質なので古傷が痛んだり関節が痛むのですがこのヒスタミンが厄介なのです。
花粉症の方はヒスタミンという物質を聞いたことがあるかもしれません。アレルギー症状を出す物質なのですが花粉症の薬ではこのヒスタミンの生成を抑制するものがあります。
服用すると眠くなるのはこのヒスタミンの生成が抑制されるからです。
このヒスタミンは脳を覚醒させる物質でもあるのです。
ですので気象病で自律神経が乱れ副交感神経が刺激されているにも関わらず脳は覚醒するので『眠れない』症状が出現するのです。
アデノシンが救世主
この脳内を覚醒させるヒスタミンの生成を抑制すれば眠気を誘発できるのですがそのためにはアデノシンという物質を体内で生成すれば抑制されることが分かっています。
このアデノシンはアデノシン三リン酸(ATP)の代謝産物です。
ざっくりいうとATPは私たちのエネルギー源です。
つまりこの低気圧の影響で生じるヒスタミンの対策は単純にエネルギーを消費すればその代謝産物であるアデノシンが生成され自然と眠くなるという至極まっとうな結論です。
コーヒーを飲むと寝られなくなるのはこのアデノシンの受容体の作用を抑制することが分かっています。
ちなみにコーヒーを摂取した場合6時間後であっても睡眠に影響を与えるともいわれているので特に不眠にお困りの方は午後のおやつ時のコーヒーも控えることをお勧めします。
軽い運動で不眠対策
低気圧の際はだるさはあると思いますがもし運動できる余裕のある方は負荷は大きくなくていいのでジムやスポーツセンターでで軽く汗を流したり、面倒な方はスパで温泉につかったりサウナもお勧めです。
お家で少し体をうごかしたりしてもいいと思います。
運動をした方が睡眠の質も深くなることが分かっているので入眠だけでなく睡眠の質も向上させる効果もありますので少しおっくうだと思いますがぜひチャレンジしてみてください。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました